『デジタル・ミニマリスト』に学ぶ脱スマホ依存ライフ

デジタルミニマリストの表紙 書評

 暇さえあればスマホいじり。人と話している時にもスマホ。

 

スマホが近くにないとそわそわする。気づいたらYouTubeを観て数時間経過していた。

 

TwitterやInstagramの投稿をチェックしていたら休日が終わっていた。スマホゲームに熱中していたら夜中になっていた。

 

こんな経験のある人も多いはずです。

 

そしてそのたびにこう思うものです。「もっと有意義なことに時間を使えたのでは…。」

 

こうした状況を打開する知恵を授けてくれるのがカル・ニューポート著の「デジタル・ミニマリスト」です。

 

著者はジョージタウン大学の准教授で、MITでコンピュータ科学を学んだ一流の学者です。

 

その彼が、30日間の「デジタル片付け」を通して、スマホやSNSを代表とする情報サービスとの付き合い方を見つめ直し、新しい、適切な関係性を築いていく方法を紹介しています。

 

今回はこの本の中でもナナマツが特に重要だと思ったポイントをピックアップします。

 

この記事をお読み頂けると分かること

・なぜ人はスマホの画面に際限なく引きつけられるのか

・「デジタル・ミニマリスト」とは

・「デジタル片付け」の方法

・質の高い余暇の過ごし方

なぜスマホの画面に引きつけられるのか

 そもそも私たちはなぜスマホの画面にあれほど引き付けられてしまうのでしょうか。

 

著者は次のように述べています。

 スクリーンの誘惑に屈してしまうのは、その人がだらしないからではない。使わずにいられないようにするために何十億、何百億ドルの資金が投じられているからだ。

 

 テクノロジーは多くの場合、使うのを我慢できなくなるように設計されている。ここで強調しておきたい点は、抵抗できないのは個人の自制心に問題があるからではなく、莫大な利益を生むように策定されたビジネスプランが現実になっただけということだ。

 

 ここで大切なのは、長時間のスマホいじりは、あなたの意志の強さや人間性に関わらず起こるということです。

 

巨大企業が莫大な資金と時間を投じ「どうすればより長くあなたを画面に引き付けられるか」について日夜研究し、試行錯誤を繰り返した結果、あなたはスマホの画面に引き付けられているのです。

 

ここでは次のような図式が成り立ちます。

あなたが画面に引き付けられた時間 = 彼らの利益

 

あなたがスマホに引き付けられれば引き付けられるほど、得をするのはあなたではなく、そのサービスを作った人たちだということです。

 

私たちの貴重な時間は彼らの利益のために差し出すのではなく、自分自身のために使わなければなりません。

 

そのためにも私たちは小手先のテクニックではなく、もっと根本的なところから、デジタル・ツールとの関わり方を見つめ直していかなければなりません。

デジタル・ミニマリストとは

 私たちがよりよく生きていくためにはデジタル・ツールを使用する時間を大幅に削減する必要があると筆者は述べます。

 

そこで必要になってくるのが「デジタル・ミニマリズム」の考え方です。著者は「デジタル・ミニマリズム」を次のように定義しています。

デジタル・ミニマリズムとは

 自分が重きを置いていることがらにプラスになるか否かを基準に厳選した一握りのツールの最適化を図り、オンラインで費やす時間をそれだけに集中して、ほかのものは惜しまず手放すようなテクノロジー利用の哲学

 

つまりオンライン上で過ごすのは、自分が大切にしたいことがらを実現するために欠かせないときだけに限定するということです。

 

そのためにはこれまでのデジタル・ツールとの関係性を一度白紙にし、付き合い方を0から再構築していく必要が出てきます。

 

ここで気をつけたいのは「デジタル・ミニマリズム」はただデジタル・ツールを否定する哲学ではないということです。

デジタル・ミニマリストの全員が一般的なツールを一切合切排除するというわけではない。ある目的を成し遂げるためにそのテクノロジーを利用するのは最善といえるだろうか”という問いを出発点として、利用するサービスを慎重に取捨選択している。

 

無意識に、漫然とデジタル・サービスの誘惑のままに過ごすのではなく、自分が使うべきツールやサービスを意識的に、慎重に取捨選択していくのが「デジタル・ミニマリズム」であると言えます。

 

デジタル片付けの方法

 先ほども述べたように、デジタル・ツールとのよりよい関係性を築いていくためには、これまでのデジタル・ツールとの付き合い方を改め、新たな関係を築き直す必要があります。

 

そのために必要になるのが

30日間の「デジタル片付け」です。

 

この「デジタル片付け」を通じて、これまで漫然と構築されてきたデジタル・ツールとの付き合い方を白紙に戻し、新たな関係の再構築を目指していきます。デジタル片付けの方法は以下の通りです。

 

デジタル片付けのプロセス
  1. 30日のリセット期間を定め、かならずしも必要ではないテクノロジーの利用を休止する。

  2. この30日間に、楽しくてやりがいのある活動や行動を新しく探したり再発見したりする。

  3. 休止期間がおわったら、まっさらな状態の生活に、休止していたテクノロジーを再導入する。その一つひとつについて、自分の生活にどのようなメリットがあるか、そのメリットを最大化するにはどのように利用すべきかを検討する。

 

著者は「デジタル片付け」を少しずつやるのではなく、強い決意をもって一気に実行することを勧めています。30日間徹底して取り組んでみてください。

 

必要なテクノロジーとは、一時的ではあっても排除してしまうと、仕事やプライベートな日常生活にデメリットや支障が生じると確実に予想できるテクノロジーを指します。

 

逆に言えば、それ以外の物は全て排除の対象ということになります。

 

くれぐれも「便利」と「必須」を混同しないようにと著者は述べています。

運用規定を設ける

 ただしどうしてもそこまで厳格に出来ないという人には「必ずしも必須ではないテクノロジーについて、“運用規定”を設け、一握りのどうしても必要な場面のみ例外的に使用を許可しておく」ことを推奨しています。

 

運用規定によってテクノロジーをいつ、どのように利用するかを具体的に定めておくことで、必要な場合には使えるが、普段から際限なく利用してしまうのを防ぐことが出来ます。

 

運用規定は例えば次のようなものです。

 

運用規定の例
  • 夫以外からの着信は通知しない
  • メールにはパソコンからアクセスする
  • ポッドキャストを聞くのは通勤時のみ
  • ストリーミング配信を利用するのは他の人と一緒の場合のみ

 

このようにして禁止するテクノロジーと関連する運用規定のリストが完成したら紙に書き出し、毎日かならず目にする場所に貼っておきましょう。

 

著者も「リセット期間中にやっていいこと、いけないことを明確に線引きしておくことが成功のカギとなる」と述べています。

 

成功したい方は必ず実践しましょう。ちなみに私ナナマツも作成しました。

 

ここまで出来たら「必須ではない」に分類したテクノロジーの利用を30日間休止します。

質の高い余暇

「必須ではない」に分類したテクノロジーの利用を休止すれば、そこに空白が生まれます。

 

著者はここで生まれた時間で「質の高い余暇」を過ごすことを提唱しています。

 

 期間中は自分が決めたテクノロジー利用のルールを守るだけではすまない。デジタル片づけを成功させるには、常時オンの光り輝くデジタル世界の外に、これは大事だと思えること、楽しいと思えることを再発見しなくてはならない。さらにいえば、リセット期間が終わってテクノロジーの再導入を始める前に、それを見つけておくことがきわめて重要になる。

 

 生活のなかでデジタル・ツールが占める役割を減らしたいなら、デジタルの手軽な気晴らしに代わる価値の高い活動に親しんでおく必要がある。携帯電話のスクリーンにかじりついているのは、余暇が充実していないせいで生まれた空白を埋めるためであることが多い。手軽な気晴らしを減らしたが、その分の空白を埋めるものがないと、日々は退屈で不快なものになりかねない。

 

 私が避けようと勧めているのは、スクリーンから提供されるものを漫然と受け取る行為がそのまま余暇活動であるような状態だ。この状態から、よりよい娯楽で余暇を埋めるような状態に変えていってほしい。そのようなよりよい娯楽の大半は、基本的に物質的な世界で見つかる。よりよい娯楽で余暇を埋める生活では、デジタル・テクノロジーはこれまで通り存在するが、これまでとは違って脇役でしかない。あなたが余暇活動を始めたり続けていったりするのを支援はするが、余暇の過ごし方そのものにはならないのだ。

 

 せっかくスマホに触っている時間を減らしたのであれば、その時間で何か夢中で取り組める活動を見つけておくことが大切です。

 

著者は特に、手先の技術を生かした活動、スキルを活かして価値のあるものを生み出すものが良いとし、次のようなものを価値の高い活動として挙げています。

「質の高い余暇」の一例
  • DIY
  • 編み物
  • 楽器の演奏
  • スポーツ/トレーニング
  • 家庭菜園

 

本書の中では余暇の活動計画の立て方まで紹介されているので、詳細が気になる方はぜひとも手に取ってご覧になってください。

テクノロジーの再導入

 30日の期間を終えたらテクノロジーを再導入することになります。

 

ここで大切なのは厳格な基準を持ってテクノロジーを再導入することです。本書ではその選考基準を次のように挙げています。

 

テクノロジー再導入の基準
  1. 大事なことがらを後押しする(何らかのメリットがある程度では不充分)

  2. 大事なことがらを支援する最善の方法である(最善ではないなら、代わりに別の方法を考える)。

  3. いつ、どのようにそのテクノロジーを利用するかを具体的に定めた標準運用規定にそった形で生活に貢献できる。

 

この3点の厳しい基準を満たしたテクノロジーのみを再導入していくことになります。

 

テクノロジーを利用する際にはメリットを最大化しつつ、デメリットを最小化するという姿勢が大切になります。

 

そこで再導入したテクノロジに―についても、生活の中のいつ、どのような場面でそのツールを使うかを定めた「標準運用規定」を設けることが必要になります。

 

「そこまでしなくても」と思う方もいらっしゃると思いますが、そこまで意識的にならなければ、デジタル・テクノロジーとの新しい関係性は維持していくことが難しいということです。

 

最初にしっかりと決めておくことが後の成功につながっていきます。

まとめ・実践報告

 私ナナマツも「デジタル・片づけ」を実践してみました。実践してみると、多くのサービスは無くても存外困らないことが分かります。

 

数年間に渡って使用を続けていたために削除するのに抵抗のあるサービスもいくつかありました(愛用のニュースアプリ・趣味に関する掲示板等)が、思い切って削除してしまえば意外にもほとんど困りませんでした。著者も

日常生活の90パーセントの場面では、携帯電話があってもなくても関係ないか、あればほんの少し便利になる程度ではないだろうか。携帯電話は役に立つが、いつでもどこでも手もとになくてはならないと思いこむのは行きすぎだ。

 

と述べていますが、まさにその通りでした。

 

私がデジタル片付けの期間にやったことは以下の通りです。

 

デジタル片付け期間にやったこと
  • 家族以外のLINEの通知オフ
  • アプリの通知全オフ
  • youtubeの視聴は家事の間だけ
  • ニュース、まとめサイトのアプリ削除
  • 趣味の競馬の情報は土・日のみチェック
  • TVerの視聴は家族との視聴時のみ(一人では見ない)
  • メッセージの返信の時間指定

 

そしてデジタル片付けによって生まれた時間で主にやったことが以下の通りです。

 

生まれた時間でやったこと
  • ベランダ菜園
  • 読書
  • ブログ執筆
  • 料理

 

「デジタル片づけ」の実施前と実施後とでは明らかに、携帯の使用時間が減り、質の高い余暇に時間を割くことが出来ていると感じています。携帯の使用時間を減らしたいと考えている方は実践の価値ありです。

 

この記事で紹介できたのは「デジタル片付け」の骨格の部分のみです。

 

ここで書いたこと以外にも、デジタル・ミニマリズムを実践していくためのさまざまなアイデアが具体的に紹介されています。

 

デジタル片付けを成功させ、デジタル・ミニマリストとして生きていきたい方は、ぜひとも本書を手に取ってご覧になってください。最後までお読み頂き本当にありがとうございました。