『投資の哲学』に学ぶ投資家が持つべき3つの精神

『投資の哲学』アイキャッチ画像 書評

この本は投資の個別具体的な投資手法について書かれた本ではなく、投資の哲学(考え方・メンタル)についての本です。著者の松下誠氏は製薬会社のMR出身の投資家で、「まこと投資スクール」の設立者として1万人以上の投資家を指導してきた経歴を持つ方です。

 

投資をしたことがある人なら投資におけるメンタルの大切さはお分かりかと思います。感情に任せて取引を続けていればあっという間に大切な資金を失ってしまいます。安定したメンタルが投資に安定した利益をもたらしてくれます。

 

もちろんこの本を読んだだけで利益を上げられるようになるとは言えません。しかし、この本に書いてあることを深く理解し、真に実行出来ている人こそが、長く利益を上げられる投資家なのだと思います。

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投資家が持つべき3つの精神

私たちが投資をする目的は、当然「お金を増やすこと」です。しかしそれを実現できている人はどれほど居るでしょうか。

 

投資の世界は9割が負けているとも言われる厳しい世界です。ほとんどの人が利益を上げられぬまま、もっと言えばお金を失って投資の世界から退場していきます。

 

そんな厳しい投資の世界で生き残り、多くの投資家を指導してきた松下氏の「投資の哲学」の中で、特に重要だと感じたのが以下の3点です。ではそれぞれ見ていきましょう。

  • 投資の先にある目的を見据える
  • リスクを管理する
  • 努力し続ける

投資の先にある目的を見据える

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本書より引用

・投資はあくまでも「自己実現」に向けての過程であることを肝に銘じたい。

 

・あなたが求めるべきものはお金ではなく、その先にある体験なのだ。あなたは人生で何を体験し、どんな気持ちになりたいのか?(中略)本当に手に入れたいものは何なのか?それを考えることが重要なのだ。

 

・あなたが投資で成功したいのであれば、自分が投資を始めた理由、投資で手に入れたいゴールを明確にしなければならない。

 

お金は自己実現のための手段であり投資はそのお金を得るための手段であると言い切ります。

 

なぜお金が必要なのか、お金を得た上で自分が何を実現したいのか、その「目的」を明確にすることで、成功への第一歩が始まります。

 

到達したい目標があるからこそ、それを実現するための具体的な手法や、取引する金融商品、トレードスタイルも決まっていくのです。

 

ちまたには投資手法や投資の始め方の情報があふれていますが、まず何よりも大切なのは、自分がどういう人生を送りたいかと言うライフプランなのです。

リスクを管理する

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リスクとは資金が増えたり減ったりする可能性、振れ幅のことを意味します。必ずしもマイナスの意味合いだけではありません。投資では取ったリスクと同じ分だけのリターンを得られるというのが基本的な考えです。

 

適切にリスクを管理していくことが投資家として成功するためには欠かすことができません。

本書より引用

・投資における死は資金を全て失うことである。この可能性を排除する具体的な試みこそが、リスクを管理することなのである。

 

私たちにとって最大のリスクは「死」です。投資における「死」とは投資資金を全て失い市場から退場してしまうことです。だからこれを何とか避け、生き残り続けなければなりません。生き残る中でチャンスも生まれてくるのです。

 

生き残るための方法として代表的なものに「損切り」があります。多くの人は含み損が出た時に「損切り」が適切に出来ません。(かく言う私も出来ていません)。

 

「損切り」は損失を確定させる行為であり、投資家にとって喜ばしい状況ではありません。だからこそ「損失を認めたくない」「持っていれば上がるかも(上がって欲しい)という願望のもと、「損切り」しないという選択をしてしまうのです。その結果、多くの場合損失は拡大し、致命傷を負ってしまうことになります。

 

「損切り」は負けを認めることであると同時に、投資における命である「資金」を守り、次に挑戦する機会を守るための行為です。

 

「損切り」をするからまた次に挑戦することが出来るのです。

 

本書より引用

・損を少なくするためのこの忍耐は、実は間違っている。損がさらに増えてしまったら、出直すことすらできなくなってしまう。予測が外れた時は、自分で立てた戦略が間違っているということだ。急いで手じまいしなければならない。一度引いて戦略を見直して再出動する。その前の段階で耐えてはいけないのだ。

 

・長期的な結果がその投資家の幸福を増大させるものであれば、個々の売買の苦痛は問題ではなくなる。しかし、多くの個人投資家は個々の売買の結果に心を奪われ、短絡的な快楽を追い求めようとする。その結果、苦痛である含み損から逃げようとする。そして、含み損はコントロール不能となって肥大化し、最終的には市場からの撤退を余儀なくされる。初めは小さくて簡単にコントロールできていた損失という苦痛が、最後にはその投資家を支配してしまう。

 

投資は勝ったり負けたりしながら結果として総資産を増やしていく行為です。百戦百勝はあり得ず、例外なく必ずどこかで「負け」=「損切り」を経験します。

 

「損切り」に遭った時に、致命傷を負わないよう、損失をコントロールすることが、投資家として生き残るためには欠かせないのです。

 

「損切り」は自分の負けを認め、お金を減らす行為であり、最初はものすごく抵抗があるはずです。しかし適切な「損切り」があってこそ次のチャンス、そして利益へとつなげることが出来るのです。そういう意味で「損切り」は勝つために必要な「経費」と言うことも出来るでしょう。

努力を続ける

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お金を増やす手段として投資を選んだ理由は人それぞれだと思いますが「楽して稼げる」という幻想は捨てなければなりません。

本文より引用

・何の努力もなしに、利益を上げられるようになることなどあり得ない。これこそが「功利主義(快楽主義)のパラドクス」と呼ばれるものである。功利主義(快楽主義)のパラドクスとは、「快楽を得る過程において、その快楽を得るために、努力や忍耐といった苦痛に耐えなければならない」という逆説だ。投資においても、長期的に利益を上げるという快楽を得るには、ゴールに至るまで懸命な努力を続けるという苦痛を受け入れなければならないのだ。あなたは、投資を楽しめるようになるために、それまでの過程において、投資で苦しまなければならない。その過程を経ることなく、投資の成功はあり得ない。

 

・お金を儲けるためなら、企業で働くなり、事業を起こすなり、他にいくらでも方法はある。あなたはその中から、あえて投資を選んだのである。ここで簡単に諦めるわけにはいかない。何としても成功するしかない。目標が達成できなければ、できるまで続けるだけだ。米国の教育家であるエルバード・ハバードは」天才とは、ただ、努力の継続ができる人のことをいう」と言っている。成功は、向こうからやってくるわけではない。あなたが努力を続けて手に入れるものなのだ。

 

常に欲や感情に振り回されることなく、売買ルールに従って、適切なタイミングに適切なサイズでエントリーし、リスクとメンタルをコントロールする術を持ち続けなければ利益を上げ続けることは出来ません。

 

そしてそれが出来るようになるためには、絶え間ない努力の継続が不可欠だということです。継続的な努力なくして成果は得ることができないという当然のことを、私たちはこと「投資」となると忘れてしまいがちです。

 

どんな分野でも成功者は絶え間ない努力と研究を続けています。相場の世界で生き残るには、結局のところ努力し続けるしかありません。そして努力を続けられるのは、最初にも述べたように、投資の先に「目的」があるからです。

 

最後に松下氏が投資と言うものを定義した言葉をご紹介しておきます。

本文より引用

・投資とは、資金が減る不安の中で、自分の戦略や手法を信じ、耐え抜いた上でチャレンジした結果、資金を増やす行為なのだ。投資で資金を増やすことは、投資家にとって大きな喜びだが、その過程に快楽はない。逆に不安と恐怖にさらされ、歯を食いしばるしかない。その先に、ようやく利益が見えてくる、これが投資の真実の姿である。

『投資の哲学』まとめ

 

  • 投資の先にある目的を見据える
  • リスクを管理する
  • 努力し続ける

 

以上「投資家が持つべき3つの精神」について見てきました。皆さんの日々の投資にも活かしてみてはいかがでしょうか。

 

この本では今回紹介したもの以外にも、投資で利益を上げ続けるために必要なメンタルについての金言が、12の章で述べられています。

 

ページ数は95ページと少ないので、2時間程度で読み切れるボリュームとなっていますが、内容は投資家にとって欠くことのできないものばかりです。

 

内容が気になったという方は『投資の哲学』をお手に取って読んでみてください。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。